数学が苦手な中高生
中高生にとって数学が苦手な生徒は非常に多くいます。このことは高校生の進路選択に大きな影響を与えます。もし、数学が苦手であるなら理系大学への進学を薦められない、国公立大学の受験を避けることになります。もちろん、努力すれば克服することはできますが、それなりの時間と労力を費やすことになります。それができる高校生は一握りかもしれません。そのため、中学生の間で数学の苦手意識を払拭(*むしろ得意にする)する必要があります。しかし、現実には数学が苦手な中学生が多いのですが、その理由について考えていきましょう。
理由① 前年度の内容が身についていない
中学生の全学年で数学を教えていると感じるのは、学年毎にしっかりと内容を理解しておくことが重要な点です。各学年で1学期最初は、1年「正負の四則計算」「文字式」、2年生「単項式、多項式」「文字式の利用」、3年生「多項式の乗法、除法」「式の展開」「因数分解」など前年度の内容を理解していないと問題が解けない内容になっています。もちろん、その場でやり直しにより計算が出来るようになりますが、学年が上がれば上がるほど時間がかかります。また、2年生の「合同」と3年生の「相似」は似ていますが、理解しなければならないことが多くあります。そのため、1度躓いてしまうと取り戻すのに時間がかかります。この点が数学ができない中高生を増やしている要因の一つになります。
もちろん、他教科でも多かれ少なかれ前年度の内容を理解していないと勉強についていけませんが、数学が一番顕著に表れます。言い換えるなら、中学生の数学をしっかりと取り組んでいないと進路選択が狭まることを意味しています。
理由② 計算速度が遅く、不正確
計算速度は単純な四則計算や分数の計算など小学生範囲の内容から大事になります。多くの学生は計算問題が解ければ理解したと考えますが、大事なのは計算速度を早く正確に解く力があるかどうかです。なぜなら、数学では問題が複雑になってくるので1題で取り組む計算量は増えてきます。そのため、計算速度が遅い学生は1つ1つの問題に時間がかかります。結果、取り組める問題数が少なくなるため学力が伸びません。これは、高校での数学で顕著に表れますが、問題の解く速度が遅い場合は演習量が減ってします。結果として、演習量が少ないために計算が不正確になるという悪循環に陥ります。
では、なぜこの様な事態になっているかと考えれば、1つの答えは小学生が取り組む計算量が少なくなっている印象はあります。一般的にドリル学習に代表されますが、授業や宿題などで取り組む計算量が昔より少なくなっている印象です。しっかりしたデーターはありませんが、分数の計算(少数の計算)ができない中高生が明らかに多すぎます。高校での化学の授業ではmol計算がmolを理解しているかどうかではなく小数点の計算ができないため正答率が低いなど訳のわからない状態になっています。それを考えれば、小学生の間にどれくらい計算問題に取り組んだかで計算力は変わります。もちろん、中学生で定期試験ごとに頑張れば取り戻すことはできますが、少なくとも80点以上は採れるように頑張る必要はあります。
理由③ 抽象的な問題を考えることが苦手
数学は文字式を利用するだけでなく、何を計算しているかわからない状態で問題を解いている場合があります。例えば、「y=2x+3の1次関数でx座標がnの時にy座標の数値は何か」という問題で初見で答えられない学生は多い。どうしてもy=3みたいに数字にしなくてはいけないと考えるからです。
ただ、これは数学に限った話ではなく、抽象的な内容を自分の頭の中で理解することが苦手な学生が増えているのではないでしょうか。言い換えれば、「問題文を読んで内容を理解する」「話を聞いて説明を理解する」というこれらの力が弱くなっている気がします。確かに、ネットは文章を読んで考えなくても答えを教えてくれることが多い。それは教科書が、年々視覚的にわかりやすさを求めた結果かもしれません(大学入試の赤本でさえフォントを変更してしまう程度に状況はよくありません)。また、一方的な授業から双方向の授業を意識し始めた結果として先生の話を聞いて理解することができなくなってきています(*双方向の場合は与えられる情報量は減る)。
結果、教科書や参考書の解説を読んでも理解できない場合や、教科書の重要な箇所を自分で考えることができない学生が増えています。ただ、これらも早い段階から意識しておけば十分に対応はできます。
理由④ 解説が不十分な数学
数学の参考書などで解説が不十分な場合があります。それは、既習事項をしっかりと定着させていけば理解できるが、勉強不足だと解説の与式が「なぜこうなるのか?」が起きてしまします。そのため、自分自身がどこまで戻って学習すれば良いかわからないことが起きます。これが、入試の勉強であれば最初から学習していくこともできるのですが、テスト対策の場合は最初から学習する時間はありません。結果として、自分自身が何がわからないのか理解できない、解説を読んでも理解できない状態になります。
ただ、高校数学であれば深刻な問題ですが、中学数学であれば振り返らなくてはいけない内容はそれほど多くありません。そのため、「解説が丁寧な参考書を使用する」か「誰か教員に何をすべきか教えてもらう」の2点で解決できます。もし、解説を読んで理解できないなら直ぐに質問しましょう。
理由⑤ 応用問題は定期試験に出題されない
応用問題に関しては難題か出題されることはあっても、一部の生徒が取り組めば良いというスタンスの場合が多いのではないでしょうか。もちろん、クラス全体では基本問題が解けていない以上に、そこに比重を置いて学習することはわかります。また、定期試験でも応用問題のウェートが多くなると平均点が大幅に下がるため出題しづらいこともわかります。
結果として、応用問題の解説などは授業でどれくらい説明しているのでしょうか?普通に解説すれば、かなりの時間が使われるので現実的に解説を配るかポイントを説明するぐらいでしょう。ただ、この応用問題は入試問題からの抜粋のケースが多く、入試レベルの内容が授業で学習していないケースもあるでしょう。結果として、定期試験では点数が採れるが入試問題ではまったく点数が採れないケースが生まれます。
まとめ
数学が苦手な学生が増えていますが、単純に勉強時間が少ないだけのケースが多くあります。そのため、勉強時間を増やせば苦手ではなくなるでしょう。ただ、高校生から勉強を始めても時間も労力も大変なことになります。それならば、小学生や中学生の間にしっかりと基礎固めが出来れば数学の苦手意識がなくなるでしょう。取りあえずは、中学生なら定期試験で75点以上は確実に採れるようにしましょう。
