「ビリギャル」「ドラゴン桜」「受験のシンデレラ」と大学受験をテーマにした映画(ドラマ)作品があります。「受験のシンデレラ」は映画は有名ではありませんが、著者は和田秀樹で受験関連本を何冊も出版している人物になります。実話や経験を基にした作品のため受験に必要なテクニックを多く学びます。もちろん、全てに当てはまるわけではありませんが、果たして本当に効果的なのか考えてみたい。
物語の展開はそれぞれですが、3つの作品に共通している点があります。特に印象的なのが下記の内容です。
まず、偏差値を上げるために重要なことは学力に合った内容の学習をする点です。「ビリギャル」「ドラゴン桜」「受験のシンデレラ」の三作とも小学生範囲の学習をしている様に場合によれば小学生の範囲まで振り返って戻る必要があります。どこまで戻って学習すれば良いかは高校生ではわからない場合も多いです。独学では限界があるので、キチンと受験を知っている先生に何から始めれば良いか教えてもらった方が良いでしょう(案外、この点が難しいのですが)
そして、入試までの受験方法や受験計画が立てられている点である。「ドラゴン桜」「受験のシンデレラ」は東京大学を目指しているが、「ビリギャル」は慶應義塾大学を目指すことになる。確かに、慶應義塾大学は小論文を使用した試験方式を選んでいるため賛否が分かれる所であるが、受験は合格すれば良いのでありとあらゆる方法を利用するのも一つである。それに見合った受験計画を進めていけばよい。「ビリギャル」は一般入試ですが、AO入試で合格させてもいいわけです。
例えば、高校3年生の7月~8月に実施される模試で偏差値が40~45程度の受験生で一般入試では難関大学の合格が不可能に近かったが、AO入試を利用して偏差値66~68の大学に合格している。試験科目は英語・小論文・面接であったが英語の偏差値も50あるかないか程度なので合格してラッキーである。ちなみに、合格した子も部活動をやっていない子もいれば、大会には出たことあるけど賞状など何もない(当然、学外でも何もしていない)場合でも合格する可能性がある。ただ、AO入試は①合否は不透明な点もあるため受験料の無駄になる可能性がある、②AO入試の準備(書類や試験対策)のため通常の勉強時間が減る、この2点が問題です。そのため、一般入試(公募推薦入試)で勝負できない可能性が高い受験生だけ取り組ませることがあります。そもそも、提出書類などが教員が添削して提出できる場合も多く、受験生以外の外部環境で有利不利が生まれる可能性がある入試に思えてしまう。
ただ、合格するための最適なルートを進むことが重要なことは「ビリギャル」「ドラゴン桜」「受験のシンデレラ」に共通のことだと思います。
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「ビリギャル」「ドラゴン桜」「受験のシンデレラ」のどれも勉強ができないという立場で物語を描いています。ただ、「受験のシンデレラ」は高校中退のため大検と併せて東大を目指すことになります。「ドラゴン桜」は偏差値が低い困難校(ドラゴン桜2では原作はそれなりの進学校・ドラマでは偏差値32程度の高校)、そして「ビリギャル」は中高一貫校の名古屋での有名女子校である。たまたま、今回「ビリギャル」について調べたら従妹の出身校であったこともあり、それなりの進学校だなぁと感じた(*「ビリギャル」での高校のクラスが作中の様な感じだったなら授業崩壊している高校になるけど大丈夫なのかな)
まず、偏差値40と言っても内容に大きな差があります。大前提に、基本的に受験勉強をしていないと点数は採れずに偏差値は低くなります。そのため、受験勉強をしていない高校生が偏差値が低いと言っても勉強ができないというわけではありません。直ぐに、学力を伸ばせる子どもは小学校・中学校などで本格的な受験勉強をしていた高校生は正しい勉強をすれば学力は伸ばしやすいです。やはり、苦労するのは中学時代も偏差値40前後の高校に進学して、高校でも偏差値40前後の受験生です。これは大きな労力が必要となります。この前提を知ってから考えてみましょう。
1.「ビリギャル」について考える。作中で小学4年生程度の学力と主人公が言って勉強しているシーンがあります。ただ、私立中学受験をしている点を考えれば小学生範囲の学習は学習しており、単に忘れていた内容を思い出すという感じになるでしょう。中学英語の範囲を3週間で終わらせたことからも、勉強はしていなかったがそれなりの学力があった(偏差値60程度の高校なので授業はそれなりの内容)だけでなく、国語の力があったことは大きい。
2.「受験のシンデレラ」について考える。高校は進学したが直ぐに中退しており、ろくに勉強をしていない。ただ、消費税の計算でレジ店員とのやり取りを見て数学のセンスがあると判断されており、国公立大学受験に必要な数学力がある(現在の学力ではなく、将来の可能性)ことから東大受験を目指しことになる。
3.「ドラゴン桜」について考える。ドラゴン桜1では偏差値36の高校生を東大受験を目指させているが、2では東大進学者数0になったが有名私大への合格者は多い中堅進学校が舞台となっている(ドラマでは偏差値32になっている)。やはり、こちらにもそれなりに力(素質)がある高校生が多い。
では、実際に偏差値40前後の高校では簡単に誰もが学力を伸ばせるとは言えない。例えば、「ビリギャル」の主人公がエスカレーター式だから中高で勉強していないと言っているが、小学生の頃から不登校で勉強以前に授業すら受けていない高校生も多い。そして、どれくらい学力がないかであるが「ビリギャル」で「漫画で日本史を覚えれば大丈夫」「日本地図ぐらいは書けるだろう」などと講師が発言しているが、まず漫画を読むことが出来ない子がいる。日本地図以前に自分の住んでいる都道府県がどこかわからない」など作中で描かれているより深刻である。そもそも、小数の掛け算や分数の足し算(引き算)ではクラス内で4割ぐらいできないこともある。ベネッセの「マナトレ」でさえ7級ぐらいから急激に正答率が下がってしまう。実際に以下は受験指導(高校生)の際に発せられた言葉である。
さて、高校生として問題があるとは思うでしょうが、それでも偏差値65~70程度の大学に進学していった受験生が発した言葉です。英語の偏差値が40もなかった子が大学では英語のトップのクラス(成績順)に入ったり、入試成績優秀で奨励金を支給された子もいます。ここからわかるように、誰でも学力は伸ばすことが出来ますが、どれ程大変かをわかっているので簡単に偏差値40前後で難関大学に行けると言わない方が良いでしょう。それでも虎視眈々と難関大学に行けるように準備はしています。
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親から子どもの進路が不安になるが高校生の場合は過度に関わりすぎるとデメリットがある。要は、入試を自分のこととして考えられなくなる点である。ただ、今回は3つの作品はそれぞれ色々なパターンがあったので参考になる。
「受験のシンデレラ」は親は子どもに対してネグレクトであり興味がない状態である。もちろん、東大受験にも否定的であるし、本人が必死に貯めたお金も母親は自分の遊びのために使うなど問題がある。実際に、この様な家庭では受験校が制限されることになり、受験直前でも勉強面以外でストレスを感じさせられ苦労する。
「ドラゴン桜」に関しては複数の生徒がいるため親の種類は様々である。もちろん、否定的な考えを持つ親などもいるだろう。実際、偏差値40未満で偏差値70前後の学校に行くと言い始めたら信頼されると思わない方が良い。まずは、自分自身が勉強をして頑張っていることを示さないと親は信頼しない。
そして、一番気になったのが「ビリギャル」である。母親は子どもに絶大な信頼(やればできる・本当は良い子)しているが、ただ作中を見る限り甘やかしすぎである。子どもの信頼と甘やかしを勘違いすると失敗する。あるシーンで、授業中に寝続けていたため呼び出しをされて担任から注意を受けていると、「塾でも勉強して、夜も寝ずに勉強している。頑張っている。でも、それじゃあ、どこで寝れば良いのですか。授業中寝ることを認めてあげてください」と担任に言って渋々認めてしまう(*どう考えてもクレーマーでしょう)。結果、担任公認として授業中に爆睡している(わがまま以外の何物でもない)。まず、最大の問題は同じクラスなら、こんな特別扱いされた子はいて欲しくない点です。実際に、この様なことをしてしまうとクラスは荒れます。作中でも授業妨害している雰囲気もあることから、一番の被害者は真面目に授業を受けたい生徒です。そして、自分の思い通りに物事が進むと考えて他者の尊重を忘れる点です。実は、自分の好きな講師の話は聞くけど、自分が嫌いな人や理解しにくい内容の解説などを取り組まなくなる点(理解しようとしない点)があります。結局、受験に必要なことを言っていても聞いていないことがよくあります。
だからと言って、内職することを否定はしません。ただ、内職する場合は授業している先生のことも尊重して、周りからバレない様に取り組む努力をしなさいと言っています。そして、「ドラゴン桜」で述べている様に普通の感覚を持つことは重要です。
まず、「ドラゴン桜」について言えば学習法に関しては理解ができる点も多い。ただ、ドラゴン桜2ではスタディサプリを使用している様に無理から取り組んだ感じはする。一方で、最大の問題点は時間のなさである。国公立大学を目指すには科目数が多いことを考えれば、あの短期間で東大合格まで仕上げるのは困難である(偏差値40前後の高校生)。そのため、お前らもっと勉強せい!と思えるシーンも多いことから時間的に難しいだろう。
「受験のシンデレラ」に関しては時間的余裕は「ドラゴン桜」よりマシである。ただ、それでも大検に合格しながら、アルバイトをしながら東大を目指すので中々困難である。学習方法は問題ないため、自学自習をはっきりとできれば可能性はある。
上記2種類は、学習方法に問題はないが時間的な問題が大きい。受験勉強は早めに始めたほうが有利なのは間違いない。特に、偏差値が低い高校生は早めに取り組めば難関大学を目指せる。ただ、両方とも経験に基づいたフィクションなので実現は難しいだろう。
「ビリギャル」に関しては、個々の課題に合わせて個別に対応する点は効果的である。一方で、あの教え方は素晴らしい反面、講師・主人公を含めて煩すぎるのは気になる。そして、最初に疑問に思った点は名古屋での物語にも関わらず、南山大学などを進めるのではなく慶應義塾・関西学院・近畿大学を受験している点(金銭的な面を気にする割に下宿代がかかる場所を選んでいる)、そして高校2年生の夏から受験勉強を始めた割に小論文を教えている点である(受験校が制限される可能性がある)点である。「無制限コース」で百数十万円を前払いして受講しており河合塾第2回全統記述模試(記述・論述式)で英語の全国偏差値は70.4のレベルに達したにも関わらず慶應義塾大学総合政策学部の合否発表の際に不合格の可能性が高いと思っている描写はなんでだろう。ただ、実際に経済・商学・文学部が不合格で神奈川にある総合政策学部だけ合格したのはある意味リアリティがある。一方で、ここまで話題になったのは「ギャル?だったから?」のか「実際に偏差値40上がることはない」からなのか分からない。
ただ、今まで受験指導した中で感じることは偏差値30~45は何も変わらない点である。たまたま、記号が合えば偏差値が大きく変わる。そのため、偏差値40前後の偏差値で考えた際に難関大学に合格できる可能性がある時期は以下のとおりである。
以上の時期に受験勉強を始めれば偏差値40前後でも難関大学に合格する可能性がある。もちろん、偏差値40前後でも高校3年生7月までは専門学校希望(AO入試で仮合格済み)から受験勉強を始めて偏差値62~64の私立大学に合格した高校生もいるので頑張りしだいでは可能性が変わってくる。
そのため、「ビリギャル」の大学合格は奇跡というより、実現可能な物語であり勉強を続けさせるモチベーションを維持させられた講師の勝利であろう。
ちなみに、偏差値60程度の高校に進学した場合は上記より短期間で受験レベルに達することができる。実際に比較すると、解説時の理解度の速さが違ってくる。そして、中学範囲を1から教えなくても良いため時間の短縮が可能である。
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3つの作品に共通しているのは、自分の学力に合った教材から取り組んでいる点である。そして、周りに何を言われようとも一生懸命取り組んでいることである。昨年度、偏差値68~70の私立大学で成績優秀で奨励金が支給された受験生は模試の判定は最高でもD判定である(昔は偏差値40未満であった)。要は、現状の偏差値が低くても、戦略次第で難関大学に合格できることを知っておこう。