アクティウラーニングという言葉自体は文科省から前面に言われることはなくなったが、新しい学力による思考力などが求められ知識偏重型の授業から思考力型の授業が増えている。では、このアクティブラーニングを含める新しい学力は本当に必要なのか?
授業を受動的に参加していることによって学習内容を理解できない学生が増えている。そのため、生徒を能動的に授業を参加させようとアクティブラーニングなどの授業が積極的に導入されており、色々な学校で挑戦している。そのため、メリットがないわけではないが教育効果は本当に高いのだろうか?
結論から言えば、生徒はアクティブラーニングの方が楽しい。なぜなら、授業を聞いているより雑談しながら勉強できる方が楽しいのは当たり前である(*100%授業に関する内容だけで取り組むことはないだろう。それは大人の会議でも同様である)。そのため、アクティブラーニングは以下のイメージになる。
青線が学力上位層、緑線が学力中位層、赤線が学力下位層である。
イメージとしてアクティブラーニングの導入により学力下位層は授業参加が能動的になることもあり効果があると言える。そのため、高校などでも進路多様校で偏差値が上がったなどの報告を貰うことがある。一方で、偏差値が上がったと言いながら進路実績は決して上がっていないケースもある。
まず、考えて欲しいのは予備校・学習塾などでアクティブラーニングを展開する授業形態をしているケースは少ない点である。なぜなら、受験に対する効果が高くないと考えているからではないだろうか。もっと正確に言えば、アクティブラーニングをすると受験範囲の全てを学習できない可能性がある。
そもそも、小中学校では子どもの多くが学習塾に通っており、大都市であれば中学3年生の70%以上が塾に通っている。そのため、いくら小6・中3で学力状況を把握しても「学校の授業料力」ではなく「学校と学習塾の授業力」の側面は否定できない。と言っても、義務教育レベルは学習量が少ないからアクティブラーニングを実施しても対応できるが高校生範囲は不可能であろう。
実際に、アクティブラーニングやコの字型授業、調べもの学習、グループワークなどの取り組みをしている授業を見学したが、単純に授業で教える情報量が少なすぎる。そのため、定期テストは範囲が少ないこともあり簡単に平均点は上がる。しかも、最近は日々の小テストで到達度を見ているため定期試験をしない場合もあるが、簡単に言って難易度が低い(*短期暗記で対応するため理解できなくても問題ない)。そのため、入試を考えた際に対応できなくなる。
ここで選択すべきことは、「学力上位層を伸ばすために学力下位層を諦めるか」「学力上位層を伸ばさずに学力下位層を伸ばすか」である。両方とも伸ばせるのが一番良いが、現実を考えてみよう。
共通テストなどで思考力が求められることになって、授業でも考える授業が増えていった。そのため、グループワークやプレゼンの様な取り組みを実施する教科もあった。問題となるのは、これらの作業では能動的に授業に参加する生徒は増えるが、授業内の情報量や演習量が減らされてしまうことが問題である。
具体例として、新しい学力を求めて班別に課題を作成してプレゼンすることを目指した数学の授業があった。正直、中学生範囲の数学も出来ていない高校生に対して演習量が明らかに不足している状態であるのに、この様な取り組みを必要とは感じていなかった。案の定、放課後などに調べものやプレゼン準備で他教科の勉強時間は減っていった。もちろん、授業内でも準備や予行練習に時間を割いていた。そして、プレゼンが終わり担当者は満足している様子であったが、実際の結果はシビアなものであった。高校2年生の8月初旬にセンター試験形式の問題を取り組ませた際に数学ⅠAのクラス平均は得点率30%程度であった(*英語は得点率60%程度・国語は得点率55%程度)。この段階で数学ⅠAのレベルなら国公立大学を目指すのは厳くなっている(*数学ⅡBは仕上がらない可能性がある)。そのため、上位層のみ8月に演習量を増やして何とか60~70%まで持っていったが思考力とは何かを考えさせられた。
学力下位層を救うために学力上位層を潰すのは間違いのはずだが、1部の学校では学力下位層に全力を注いでいる。
アクティブラーニングを簡単に導入すべきと言う意見もあるが、学生にとって本当のアクティブラーニングは負担が重たい。なぜなら、アクティブラーニングを取り組むために取り組むべき準備が多いからである。授業内で調べきれない内容などは宿題になりやすかったり、プレゼン資料をまとめたり、クラスメイト内で意見をまとめるなど授業外の時間が多くかかる。
本当に効果がある方法なら、6時間の授業があれば予習などに6時間以上かかっても不思議ではない。それに、知識がないもの同士の議論ほど意味のないものはない。
では、あなたは受験対策を犠牲にして授業の準備をしたいですか?結局は、授業内で調べて⇒まとめて⇒発表(プリントに書く)だけになり情報量が少なくなる。あるいは、中途半端に真面目な学生だけが損をする場合になる。
アクティブラーニングを活用するのは副教材などの科目の方が良いが、探求など授業が設置されたように知識を深めなさいと言いながら共通テストの問題は情報処理能力を高めることが求められている。調べもの学習に関してもネット調べが多く、先の数学では出典はヤフー知恵袋かウィキペディアしかなかった。
もちろん、班行動などグループワークを学ぶ良い経験だが(人見知りは最悪な気分だろうが)、同じクラス内でやっても仕方がない。オンラインが出来るなら他校とやりあえば良いのに…と思ってしまう。