東工大は2025年4月入学者から「学修環境を多様性のある理想的なものに近づけるため」「より多くの女性科学者・技術者を社会のさまざまな分野に輩出するため」などと説明。また「これを起点に波紋が広がり、当大学に限らず社会全体に、真に多様性を受容する環境が育つことを期待する」という理由で女子枠がつくられる。2025年には一般枠930人から801人に減らして女子枠143人をつくるが本当に有効な入試なのか?
女子推薦入試に関しては一部の私立大学で実施している様に既に入試方式としては実施されていますが、東工大のような国立大学では珍しいでしょう。ただ、最近は多様性や性別の公平性を強く言っている大学では、敢えて導入する理由がわかりません。この制度を国立大学が導入されると、依然の医学部での女子・多浪受験生での点数差も大きな問題でないように感じます。
確かに、理系は男子が多くて女子が少ないことは間違いないでしょう。そして、女子の発想力は新たなイノベーションを引き起こす可能性もあります。また、女子の比率が上がることで男子校のノリを嫌っていた男子や女子も東工大を目指すかもしれません。そのため、東工大は志願者が増加する可能性があります。しかし、逆にマイナスのリスクも多くあることも考える必要があるでしょう。
まず、東工大が女子枠を設置したところで理系に進学を希望する女子が増えないでしょう。そもそも、東工大で女子枠があるから理系に進学しようではなく、理系を希望している女子が女子枠があるから東工大を志望校にしようというパターンがほとんどでしょう。そのため、理系女子のπが増えるのではなく、理系希望者を単純に奪い合っているだけではないでしょうか。
その一方で、一般枠が少なくなることで本気で勉強をしていた受験生が敬遠する可能性もあります。一般枠が減れば偏差値は上がります。ただ、女子枠が導入された数年間は受験生の中で偏差値上昇の理由も知っています。そして、本気で勉強をしていた受験生なら感じる人も多いでしょうけど、腑に落ちない点があることも見落としてはいけません。
そもそも、国立大学が公平な試験ではなく女性しか受けられない入試を導入したこと自体が不思議です。言い換えるなら、共通テストを受験は必要だが数学Ⅲの勉強をしていない生徒を入れることになります。果たして、本当に成功するのでしょうか?
お名前.com理系で女子が少ないと嘆いていますが、単純に女子枠を設置したから理系志望者の女子が増えるわけではありません。また、男子でも理系希望者は減っていますが…。
そもそも、文理選択の際にキャンパスライフを考えた際に、明らかに勉強量と拘束時間が長いのは理系になります。もちろん、文系大学も以前よりはるかに授業があります。それでも、理系の方が課題の量や留年率が高くなる傾向にあります。では、そのような大学生活を敢えて選びたいですか?
まず、大学生の過ごし方が文系より理系の方が不透明感があるのも事実です。文系であれば、「やりたくない学問」を外して考えることもできますが、理系は多くの学科では「何が学べるか」を考えておく必要があります。そのため、事前に学問研究が必要でしょうが手間暇がかかります。また、文系は大学生になる印象ですが、理系は大学院まで視野に入れて考える必要があります。その様に考えていくと、東工大は中高生にどれだけ理系の魅力を伝えることができたのでしょうか?
では、実際に理系学部の志願者を増やすためにはどうすれば良いのでしょうか?まず、①中高での理系科目の授業時間の増加、②学費を抑える、③学問と職業を直結して考える(広報する)、④数学ができない生徒に対する対応、これぐらいしか思いつきません。そもそも、日本社会がどれだけ研究者のニーズがあるかが不透明です。
ただ、単純に理系に進んだ場合は重点的に奨学金(成績上位者)を出すなど女子だけでなく全体の需要を上げる必要があるでしょう。