総合型選抜入試の限界
芸能人であり子役タレントである鈴木福君が慶応義塾大学の合格が報道されたが、総合型選抜入試(AO入試)での入学を決めた。芸能人が筆記試験なしで大学に進学するたびに賛否が生まれる。果たして、芸能人が総合型選抜入試で進学することはアリなのだろうか?
芸能人がAO入試で大学合格を先に決めてしまうと賛否が出てきますが、そもそも芸能人だから「勉強ができない」や「広告になるから合格させた」と判断することは間違いでしょう。しかし、一方で国公立大学に進学したという話は聞かないように、明治大学や慶応義塾大学に集中している印象はあります。また、いわゆるFランク大学に進学した話も聞かないことから、「大学に行きたい」より「選ばれた大学に行きたい」とも感じます。
ただし、芸能活動を行っていた人々は一種の社会人入試と同じであり、これまでの経験から得た知識や技術は並みの高校生とは大きく違います。そういった意味で多様性を重視する考えであれば芸能人を合格させるのは間違いではないでしょう。ただ、芸能活動を続けることになると明らかに学業との両立は困難を極めると言えます。もちろん、卒業することはできますが普通に授業に出席することも難しいのではないでしょうか?一般的な大学生が行うアルバイトとは桁違いに忙しいでしょう。そうすると学生本人の学習意欲を評価するAO入試とは意味合いが違ってくる気もします。
でも、芸能人だけが問題なのでしょうか?実は、スポーツ推薦入試も違和感を覚えることがあります。運動関連の学部であれば理解ができますが商学部や社会学部などにスポーツ推薦入試で進学してくる場合があります。もし、運動関連を極めたいのであれば体育系の大学に進学すれば良いのでしょうが、実際には難関私大などに多く進学をしています。そのため、芸能人がAO入試で合格して場合に賛否が出るならスポーツ推薦入試でも同じではないでしょうか?内部進学も感じますが…。
しかし、芸能活動しながら東京大学と言わないまでも千葉大学や横浜国立大学などに合格すれば芸能活動だけでなく勉強も頑張っていたんだと感じますし自身のブランド価値を上げることはできます。ただ、やはり現実的には難しいのでしょう。
総合型選抜入試(AO入試)は難関私立大学の狙い目になっているのは広く周知されています。そのため、以前よりは狭き門になっているのも確かです。ただ、一般選抜を目指して頑張っている人からすれば恨めしさが出てしまっているのかもしれません。1999年に広末涼子さんが早稲田大学教育学部に合格した際に志願者数が激増すると思いながら、意外に志願者は増えませんでした。それは、必死に勉強している受験生からすれば冷ややかに見てしまうからでしょう。ただ、受験生ならそれぐらい必死な方が良いでしょうが、羨ましいなぁぐらいで終わらせるぐらいのゆとりは持っておきましょう。
しかし、総合型選抜入試(AO入試)は何のための入試かがわからなくなってきます。以前から青田買いと批判されながら大学によっては反論しているケースもありますが、それでも学力試験を課さないのは大学としてどうなんでしょうか?もし、本人に学習意欲があれば浪人してでも必死に勉強するはずですが…本当は、一部の極端な才能を持った高校生を救うことがメインだった気もしますが…今では多様性が重視されます。そして、多様性と言いながら平凡な高校生活では評価はされません。
さて、総合型選抜入試(AO入試)を実施するのは問題ないのでしょうが、やはり時期が気になります。どうせ入試をするなら一般選抜型入試と同時期に実施すれば良いのではないでしょうか?そうすれば本当の意味での入試になるのではないでしょうか?または、1年間(あるいは3年間)を通してインターンの様に何度も大学で学ばせたのちに評価するのも良いのではないでしょうか?
そもそも、書類審査と面接や小論文などの1回や2回の審査で人物を正しく評価できるのでしょうか?学力試験を課さない以上は人物を見抜く必要がありますが、それだけで見抜けないでしょう。では、どうやって合否を決めるでしょうか?
どの試験も学力試験を課すべきだと思います。それがない入試は楽していると思われるのも仕方ありません。ただ、大学生の半数は学力試験がない状態で進学しているという事実を知っていれば、芸能人だろうがスポーツ推薦だろうが合格できることは納得できます。