学力の二極化が進む
小学生の間から学力の格差は生まれていますが、あまり表面化にならないことが多い。しかし、中学校に進学すると定期試験などで学力に気づかされます。ただ、問題となるのは「勉強しなくてはいけない」と考える生徒が昔より少なくなってきた気がします。
その理由として、1つ目は評定(内申)の問題点にあるかもしれません。それは、評定4の価値が下がった気がします。相対評価の時代であれば評定4は勉強ができる学力層でしたが、最近は平均的な学力層で評定4がとれるようになっています。さらに観点別評価の影響もあり、単純な学力だけでは評定が決まらないことも複雑になり過ぎている気がします。結果として、そこそこの勉強で評定4がとれるなら学習意欲は上がらないでしょう。
2つ目に、高校進学や大学進学が簡単になっている点です。一部の学校を除けば、それほど受験勉強をしなくても進学できる高校がある点です。また、通信制・単位制高校への在籍者数が増加傾向にあるように従来の進学に対する考え方が変わってきています。大学進学に関しても、全国の私立大学の約6割が定員割れしているように、大学名や学部に強い拘りがなければ進学は誰でも可能です。既に、大学進学者数の半数程度は推薦入試を活用しており、従来の筆記試験を受けずに進学をしています。そのため、勉強しなくても大学まで進学できるなら学習意欲を上げることは難しいでしょう。
3つ目に、携帯電話の使用時間に問題がある。携帯電話に関しては動画やゲーム、SNSなど色々な使用方法がありますが、中学生の平均的な携帯電話使用時間は2~3時間となっています。もちろん、テレビの視聴に代わって携帯電話の使用が娯楽になったのかもしれませんが、明らかに勉強時間を減らすよ要因にはなっています。受験勉強より携帯電話の使用が優先されているのが現状です。
これらのことを考えると、中高生は勉強せずとも一定の進路が確保されているため、勉強よりも娯楽を選択したい気持ちはわかります。ただし、中高生の全員が勉強をしなくなったのではなく、あくまで学力が二極化している点です。
勉強を頑張る生徒
生徒や保護者の中では平均点で満足する場合がありますが、大学進学まで考えた際に選択肢が狭める可能性があります。そのため、ある程度は上位校に進学しておきたいと考える生徒が多くいても不思議ではありません。実際に高校3年生になってから志望校への現実的な厳しさを痛感する場合があります。例えば、関関同立の合格数が100名であっても、定員が300人以上であれば3分の1の割合でしかなく、合格数は1人で複数合格した受験生も含めるので実際にはもっと厳しい現実になります。また、指定校推薦入試を期待しても学部が限定されているや校内選考で勝てないケースもあります。そのため、ある程度の進路に不安があるから勉強を頑張ろうとする考えは正しいでしょう。もちろん、勉強を頑張った成果としてテストの点数に反映されるのが嬉しいと考える生徒や勉強すること自体が普通と考えている生徒もいます。
また、大学受験では難関国公立大学の場合は早めに受験対策をしないと間に合いません。そのため、高校選びの際に国公立大学を目指したコースを選ぶ生徒も多くいます。そうすると、高校に入ってからで良いのでは?と考える保護者や生徒もいますが、難関国公立大学の場合はライバルは中高一貫校になります。そして、その様な学校では中学3年生段階で高校1年生の学習をしています(*もっとも全員が勉強するという雰囲気にはならないでしょうが)。そのため、早めに取り組んだ方が合格率を上げることができます。
この様に、勉強をしない中高生がいる一方で、勉強をする中高生もいます。ただ、これが二極化が進んでいる印象はあります。
二極化する学力の問題
学力が二極化した場合に困るのは授業の内容になります。ここで問題となるのは「勉強をしない」→「授業がわからない」→「ますます勉強しない」の負のループに陥っている生徒がいることです。たとえ、学力が低い状態であっても時間をかけて取り組んでいけば成績は上がります。一方で、そもそも勉強する気がない生徒の場合は学力を上げようとしてくれません。そのため、どれだけ教えても学習効果を高めることは難しい。
そして、問題となるのは授業でどの学力層にむけて授業をしているかという点です。中学校であれば、学習すべきカリキュラムが決まっているのでカリキュラム通りの授業ペースで問題はないでしょう。しかし、実際には勉強ができない生徒に合わせて授業をしてしまうケースが多い点です。このことは、決して悪いことではないのでしょうが、1学期は授業ペースが遅くテスト範囲が短いと思っていたら、2学期期末頃から急激にペースが上がる場合があります。中には、この内容を1時間で終わるの?と思うこともあります。
結局、学力が二極化すれば、どの学力層にむけて授業をすればよいのか難しくなる。そのため、習熟度別などで対応すべきでしょうが、現実的には評価のつけ方など課題も多くあります。今後も、この傾向は高まっていく可能性があります。
